9月の制限改訂を考察する
今回も制限改訂理由についてコナミが語ることはないだろう。だから、個人的に考察することにしてみた。もちろん、コナミの公式の見解ではないことを重ねて忠告しておく。
今回の制限改訂のポイントは二つに集約される。一つ目が「機械族モンスターの販売推進」、二つ目が「デュエル時間の短縮」である。さらにおまけとして、いくつかのカードについても触れたいと思う。
今回の制限改訂のポイントは二つに集約される。一つ目が「機械族モンスターの販売推進」、二つ目が「デュエル時間の短縮」である。さらにおまけとして、いくつかのカードについても触れたいと思う。
機械族モンスターの販売推進
ポイントの一つ目が「機械族モンスターの販売推進」だ。これは来月発売される「ストラク機械」に収録される「ガジェット」モンスター、10月に発売される「DPヘルカイザー編」に収録される各種《サイバー・ドラゴン》系のカードについてである。「ガジェット」について
「ガジェット」はもう長くトーナメントシーンの第一線に残り続けており、誰もが何らかの規制を受けると思っていた。しかし、このタイミングで「ガジェット」を制限カードに指定してしまえば、3箱買われるはずだった「ストラク機械」の購入数が減ることは確実である。また、「ストラク機械」に「ガジェット」が収録されるということは、海外でも「ガジェット」がようやく使えるということでもある。海外で「ストラク機械」がいつ発売になるかはわからないが、現時点で制限にしておいて売り上げを減らすようなことをするのは営利企業としては得策とはいえない。
《サイバー・ドラゴン》について
《サイバー・ドラゴン》は現在のモンスターの基準からいえば、明らかなオーバーパワーカードである。長らく制限カードに指定されていた《ヴァンパイア・ロード》を昨今全く見ないことからも、それは明らかである。本来であれば、このタイミングで制限カードに指定するのが妥当であると考えられるが、商業上の事情も考えるともう少し複雑な問題となる。VJによると、「DPヘルカイザー編」には《サイバー・エンド・ドラゴン》が収録されるという。ということは、まず間違いなく《サイバー・ドラゴン》も収録されるだろうし、《サイバー・ツイン・ドラゴン》だけが収録されないということも考えにくい。さらに、《キメラテック・オーバー・ドラゴン》も収録されることになっている。そして、《サイバー・ドラゴン》はこれらすべてのカードの融合素材である。《サイバー・ドラゴン》が制限カードになっていればこれらのカードの魅力は激減するだろうから、DPの売り上げにも直結するのは誰の目にも明らかであろう。
これから発売予定の商品の価値を下げるようなことはしない
「ガジェット」と《サイバー・ドラゴン》の放置は、そういうことである。今ではどちらもかなりの高額カードとなっており、すべて3枚ずつ所持している人はそれほど多くはないだろう。だから、コナミはこれらのカードを再録によって広く普及させようとしたいのであろう。そうすれば、商品もよく売れるのだから。「デュエル時間の短縮」
ポイントの二つ目が「デュエル時間の短縮」だ。これを一番端的に表しているのが《破壊輪》の復帰と《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の禁止だろう。《破壊輪》はお互いのライフにダメージを与える効果を持つので、デュエル時間の短縮につながる。事実《破壊輪》が準制限だった時代はすぐにデュエルが終わっていた。
《サウザンド・アイズ・サクリファイス》は変異カオスのキーカードであり、デュエルの長期化に一役買っていたカードである。CDIPで登場した《簡易融合》は蘇生可能な《サウザンド・アイズ・サクリファイス》を作り出してしまうので、デュエル時間が長引くおそれがあるのだ。
そのほかにも《グラヴィティ・バインド−超重力の網−》《光の護封壁》といった攻撃を禁止するカードにも規制が入った。これらのカードが入ったコントロールデッキは得てしてデュエル時間が長くなりがちである。
コントロールデッキに対してコンボデッキはコンボが決まれば即ゲームセットであるので、比較的デュエル時間は短い。だから、キメラデッキのキーカードからは《未来融合−フューチャー・フュージョン》と《ハリケーン》のみの規制強化にとどまったのであろう。制限がかかると毎回のようにいわれている《デビル・フランケン》が今回も放置なのは、デュエル時間の短縮に一役買っているからと考えれば、少しは理解できはしまいか。
コナミは変異カオス全盛時代のだらだらと長いデュエルの再来は避けたいと思っているのではないだろうか。もちろん憶測でしかないわけだが、私は強くそう思っている。
《ヴィクトリー・ドラゴン》の復帰
今回の改訂の最大のサプライズはこのカードの復帰だろう。コントロールデッキのフィニッシャーとしてはこの上ないカードであり、サレンダー問題などいろいろと物議を醸し出したカードでもある。もちろん復帰には代償も伴った。《月読命》の禁止である。このカードは《闇の仮面》を使い回して《刻の封印》を連発することを簡単に行えるカードであり、Vドラコントロールの要ともいえるカードであった。《月読命》が使えないとなると、以前と同じ形のデッキは作れない。
しかし、デッキ職人さんとはすごいものである。制限改訂情報がわかった昨日の時点で、すでにVドラコントロールを作っている方がいたのである。さすがに以前よりスマートな形にはなっていなかったが、初日ですでに形にしていたこと自体がすごいことである。以前と同じように、使いこなすには非常に高度なプレイング技術が必要とされるだろうから、広く普及することはないだろう。しかし、デッキとして確実に存在することは事実である。
《カオス・ソーサラー》の禁止
今回最も多かった意見が、このカードの禁止はやり過ぎだというものであろう。しかし、私はそうは思わない。《カオス・ソーサラー》が1枚でも使えれば、必ずデッキ構築に光属性と闇属性を意識せざるを得ない。これはデッキ構築の自由度を下げる結果となるからである。これからは属性をあまり気にせずデッキが作れるのである。前向きにものを考えようではないか。《カオス・ソーサラー》禁止の直接の理由は、海外の環境に原因があると考えられる。海外ではガジェもバブーンもキメラもデッキとして存在していない。そうなれば必然的に皆がカオスを使うようになるわけだ。
先日アメリカのインディアナポリスで378名によるスイスドロー9回戦にも及ぶ大規模な大会が開催されたが、そのトップ8のデッキ(メイン・サイドあわせて)にはすべてに《カオス・ソーサラー》がいたのである。まさに海外の環境は「カオス一色」である。これはカードゲームとしては大問題だ。多様性のないカードゲームほどつまらないものはない。
日本の禁止・制限カードは海外でも適用される。となれば、日本で《カオス・ソーサラー》が禁止にならなければ、海外の「カオス一色」状態は変わらない。これは制限カードでは生ぬるいのだ。1枚でデッキの属性を拘束できる力があるのだから。
そのほかのカードについて
これ以外のカードについてはカードパワー的に妥当な位置に落ち着いたものが多いので、解説は省略する。制限解除組に関しては良い決断だったと思う。カードがほとんど使われないのであれば、使える枚数を多くして様子を見るのが妥当な線だ。もし3枚では都合が悪いと判断したのであれば、また規制をかければいいだけだから。
最後に
商業的な理由からの「ガジェット」と《サイバー・ドラゴン》については非常に残念であるが、そのほかはおおむね満足できる改訂だと評価したい。ただし、《ヴィクトリー・ドラゴン》は戻すべきではなかった。またサレンダー問題が表面化すると思うと頭が痛い。今後の環境はガジェとキメラを中心に回っていくことが予想される。ただ、いくつかの新しい芽も芽生えそうな感じがするので、こちらにも注目していきたい。
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